稲田さんの作品に初めて触れたとき、その表現力の見事さにはとにかく目を見張りました。
そこには、通常の作家であればとても重すぎて抱えきれないような様々な要素が
いとも軽やかにかつ優雅に共存し脈打っているのです。

宝石は高らかに自らの美しさを主張する。
だから、時にそれを身につけている人の存在を置き去りにしてしまう。

ところが稲田さんのアクセサリーは自分だけで美しくあろうとはしません。
むしろ、それを身につけている人に寄り添い、
その人を輝かせることを使命と心得ているかのようです。

生命を輝かせる優しさの美。
癒しの装身具。

とは言っても、彼の作品が地味で目立たぬというわけではありません。
古典的なたたずまいと現代的斬新さ、
奔放でかつ寡黙な面持ち、
志士の気高さと子供の無邪気さを併せ持つ、
最良のバロック芸術さながらの風格をごく自然な身振りで体現しています。

クジラのヒゲという稀有な素材に出会ってから、この傾向は飛躍的に深まりをみせつつあります。
ことによると彼は、世界でも類を見ない奇跡のような作品を生み出しつつあるのかもしれない…。
そんな充実ぶりをこの優しく美しい作品たちは雄弁に物語っています。
                         

詩人・詩書画家 佐々木俊弥